![]() ILMA艦隊旗艦ジムニー、遂に遭難 トランスファー駆動不可能に 初の自力帰還断念に衝撃広がる |
![]() 現在まで自力帰投をその信条としてきたILMA艦隊にとって、トランスポーターによる帰還は初めてのこと。初の大トラブルに、艦隊司令部には衝撃の波紋が広がっている。 停止時の謎の異音 今回のテスト航海の目的は、車検からの期間時に発見された、停止時の異音の正体を突き止めることにあった。出航前の点検ではトランスファー、前後デフ、プロペラシャフト、ホイールなどの接合部などがチェックされた。今回の車検では前輪のガタを抑えるためのベアリングの増し締め、トランスファーギアのリア側アウトプットシャフトのオイルシール交換などが行われており、該当部分の点検、増し締めなどが行われた。この時点では特に問題は発見されず、見切りで出航となった。出航後しばらくは異音も発生せず、問題は解決したかに思えた。だが、これは嵐の前の静けさに過ぎなかった。 ![]() ![]() 走り始めること20分ほどで、例の異音が大きくなり始めた。停止時に「カコ、カコ、カコン!」という音を立てる。どうやらギアが暖まってくると症状が出てくるようだ。どのギアボックスが原因か、走行試験が開始される。 ![]() 突然の走行不可能状態に トラブルは大きな交差点の右折レーンで起きた。青信号で前に進もうとすると、停車時にニュートラルに抜いたトランスファーギアのシフトレバーが全く動作しなくなっていた。4車線の大通りの最も中央寄りのレーンで、ギアがニュートラルになったまま、動けなくなってしまったのだ。 ![]() とりあえずショップに連絡して、再入院の予約を取っておく。どうにもならなければ連絡をくれとのことだ。こうなると、ギアを何とか抜かなくてはならない。考えられる手法は、アウトプットシャフトを完全フリーの状態にして、レバーを動かすことだ。噛み込みの症状が甘ければこの方法で対処が可能なはずだ。ただし、フロント側はフリーハブを抜けば問題ないが、リア側はプロペラシャフトを降ろす必要がある。 プロペラシャフトの脱着はかつて艦隊整備廠にて行われたこともあったが、今回は遅々として進まなかった。スプラインのグリスが補充されたために、スプラインが完全に縮みきらず、抜けないのだ。仕方なく、ネジを外していっぱいまで手前に引き、アウトプットシャフトをフリーの状態にした。そして動けと念じて、トランスファーレバーに手をかけた。だが、結果は無慈悲にも全く変わらなかったのである。 ![]() こうなると、もう残念ながらお手上げである。再度ショップに状況を連絡すると、有無を言わさずトランスポーターの出動となった。1時間強で現場に到着したトランスポーターの豪華さに、艦隊乗員は目を見張った。ウインチ付きの車両輸送専用のトラックである。荷台が後方にスライドしながら斜めにせり上がり、ウインチで車体を引き揚げることができる。 自分の車を引き揚げる作業は、状況を忘れるほど楽しい。まるで被弾戦車の回収現場のような状況に「タミヤのドラゴンワゴンを完成させていないことによる呪いではないか」との声すら挙がりそうだ。 気になる輸送費だが、豪華な装備の割に1万円半ば程度で済みそう。この車輌自体はニッポンレンタカー連合艦隊からの借り受けなのだが、ショップ経由の業者割引を使うとかなり安く回航できるとのこと。車検後で絶望的な財政難に苦しむILMA艦隊にとって、数少ない明るいニュースとなった。 ![]() ![]() 工場に何とかたどり着くと、今回の車検を担当してくれたエンジニアI氏の出番となった。かつてジムニーのエンジンOHもお願いしている方だ。たちまちトランスファーは丸裸の状態にされ、2つ目の「療法」が行われた。プラハンでトランスファーのシャフトをガンガンと叩くのである。だが、残念ながらこの方法でも回復せず。もう、こうなると「手術」だ。トランスファーを降ろしてオーバーホールするしかない。 I氏が考えるに、最初の異音もトランスファーのアウトプットシャフトが犯人だという。元々ベアリングがヘタっているところへ、出力側のオイルシールだけ交換したため、当たりが変わってしまって、音が出るようになったのではないかとのことだ。トランスファーの噛み込みは、これとは独立した症状で、トライアルの現場で起こるほか、降雪時くらいにしか四駆にしない使用頻度の低いトランスファーの場合も、古くなるとレバー切り替え時に噛み込むという。音が気になって、レバーを無闇に動かしてしまったのが、残念ながら直接の原因だったようだ。 ![]() さて、実際の修理だが、トランスファーもそれなりにヤレており、フロントシャフトもいずれは抜いてベアリングの交換が必要な状態だ。トランスファーだけ単独OHというのはやや無駄な気がする。するとI氏は工場の2階へ上がり、あるものを取ってきた。なんと同型車の中古トランスファーである。バックラッシュはやや大きいものの、トランスファーの動作、ギアの回りは上々である。センターブレーキのパーツはないものの、レバーまでしっかりついている。うまく行けば、ポン付けで異音まで含む全問題が解決する。 実際、このパーツが丸々流用されるかどうかは、パーツの状況を見て、ということになった。とりあえずポン付けで様子を見、問題が残るようなら潔くOHを行う、という流れだ。車検直後のOHとなれば、ILMA島の財政が赤字へと転落することは必至だ。今回も早速、大蔵大臣より艦隊存続に難色を示すコメントが発表されている。だが、ILMA島艦隊司令官は「旗艦は死守する。OHも辞さない」とあくまで強気の構えだ。艦隊存続の命運をかけた、トランスファーの交換作業の結果に、周辺諸国からも注目が集まっている。 |
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